【整備の闇】20分で終わるはずのタイヤ交換が「2時間半」の死闘に変わった理由

無残に錆に覆われた、リアアクスルシャフト 整備記録

【整備の闇】20分で終わるはずのタイヤ交換が「2時間半」の死闘に変わった理由

店長
店長

皆様、こんにちは、和歌山のバイク屋、バイク屋カルツの店主中山です。

今日は、一台のリアタイヤ交換の依頼を通じて再確認した「整備の真実」についてお話しします。 本来なら、手慣れた手順でパッと終わるはずの作業ですが、そこには「前回の整備」が残した、見えない時限爆弾が隠されていました。

結果から言うと、ホイールを外すだけで「2時間30分」を要しました。

犯人は「塗られなかったグリス」

原因は明白でした。 前回のタイヤ交換時、作業した人間がアクスルシャフトへの給油(グリスアップ)を怠ったこと。

金属同士が触れ合うアクスルシャフトは、熱や湿気で非常に錆びやすい場所です。 そこにわずか一塗りのグリスがないだけで、数年後、錆は接着剤のようにシャフトとホイールを一体化させてしまいます。

2時間半、ひたすら「待つ」という格闘

固着し、取り外すため作業を行うホイール

固着したシャフトを抜くのに、魔法のような特殊工具はありません。 浸透性の潤滑油を少しずつ染み込ませ、ハンマーで微細な振動を与え、また染み込ませる……

潤滑油が浸透し、ようやくワッシャーが外れたホイール

無理に叩けば、ベアリングやクランクケースを破損させるリスクがあります。 ようやく固着していたワッシャーが外れたときには、すでにかなりの時間が経過していました

抜いて終わりではない「本当の整備」

無残に錆に覆われた、リアアクスルシャフト

苦労して引き抜いたアクスルシャフトは、見るも無残な赤錆に覆われていました

錆を除去した後のリアアクスルシャフト

物理的に完全な除去は不可能ですが、時間をかけて可能な限り錆を落とし、再使用に耐えうる状態まで磨き上げました

さらに、今回は付随する作業として以下のメンテナンスも徹底しています。

  • ホイールスプラインの錆除去:次の着脱がスムーズになるよう徹底清掃。

  • ブレーキ周りの完全洗浄:浸透剤で汚れたドラム内を脱脂・洗浄。

  • ブレーキシューのグリスアップ:可動部を洗浄し、本来の動きを取り戻す処置。

私が「見えない一手間」を捨てない理由

以前、こちらの記事でも触れましたが、メンテナンスにおいて「今、動けばいい」はプロの仕事ではありません。

【関連記事:レッツ2のフロントタイヤ交換で見えたこと】https://kreuz-kudoyama.com/lets2-tire-replacement/

次にこのバイクを整備する誰かが、20分で笑顔で作業を終えられるように。 私は今日も、手が真っ黒になっても、見えない場所にグリスを塗り続けます。

それこそが、お客様の大切な「時間」と「愛車の未来」を守る、当店の誠実なスタンスだと信じているからです。

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