【整備記録】ジャイロキャノピー:50m走行でストール…真犯人はキャブではなく「点火系」の落とし穴

本日は、ミリタリーテイスト溢れるカスタムが魅力のジャイロキャノピーの整備記録です。


症状は「エンジン始動は快調だが、走り出すとわずか50メートルほどで失速・停止する」というもの。 まずは基本に忠実な診断からスタートしました。
プラグが語る「不完全燃焼」のサイン
エンジンからプラグを抜き取ると、電極まで真っ黒に湿った「カブり」の状態でした。

まずはバーナーで丁寧に焼き、堆積したカーボンを焼き切って清掃します。

再装着時は、KTCのプラグ専用のトルクレンチを使用して規定トルク 20Nm で正確に管理。 感覚に頼らない「数値での管理」が、二次トラブルを防ぐカルツの基本です。


キャブレターの徹底検証
次に、4ヶ月前に交換済みの燃料ポンプの動作をチェック。
ガソリンはしっかり来ている。そこでキャブレターを全分解し、内部のコンディションを隅々まで確認しました。


結果、内部は非常にクリーンで詰まりもなし。 ここで「燃料系(多すぎるガソリン)」ではなく、「点火系(弱すぎる火花)」へとターゲットを絞り込みます。
真犯人の特定:ハイテンションコードの「緑青」
ここで店主の経験則が光ります。イグニッションコイル自体の故障はゼロではありませんが、確率としては非常に低いもの。 そこで真っ先に疑ったのは、後付けで交換されていたハイテンションコードそのものです。

万が一に備え、交換用のイグニッションコイルも手元に準備した上で検証を進めます。 コードを切断して断面を確認すると、予想通り水分が原因と思われる「緑青(ろくしょうと読みます。サビの事)」がびっしりと発生していました。

このサビが大きな抵抗となり、走行時の高負荷に耐えられずリーク(漏電)していたのが失速の真犯人です。 腐食部を確実に除去し、接点復活剤を塗布して組み戻すことで、本来の力強い火花が復活しました。

プラスαの安心のために
最終のルーチンチェック中、誤ったルートで取り回され損傷していたブレーキケーブルを発見。 現状の動作に支障はありませんが、将来のリスクを断つために正しい位置へ修正を行いました。
今回の整備費用(参考)
お客様に安心してご依頼いただけるよう、今回の修理費用の内訳を公開いたします。
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引取・配送費:3,300円
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キャブレター分解清掃:7,700円
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電装系修理(コード腐食除去・接点復活):3,300円
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合計:14,300円(すべて税込)
※今回の整備費用は一例です。車種や症状、部品代により変動いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
【結果】
走行テストの結果、失速症状は完全に解消し、全域でスムーズな加速が戻りました。 「カブっているからキャブ」という先入観に囚われず、物理的な証拠を一つずつ追い込むことで、最短・確実な解決へと繋がりました。

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